【弁護士解説】マンション共用部分の漏水責任 管理組合が「占有者」に(最高裁令和8年1月22日判決)
2026/05/22
マンションの共用部分から漏水が発生し、専有部分に被害が出た場合、誰が責任を負うのか。長年議論されてきたこの問題に対し、2026年(令和8年)1月22日、最高裁判所は非常に重要な判断を示しました。
本記事では、千代田区麹町でマンション管理問題を取り扱う窪田総合法律事務所の弁護士が、この最新判決が管理組合や居住者に与える影響を詳しく解説します。
事件の概要:新宿区・練馬区のマンション漏水訴訟
今回の最高裁判決の対象となったのは、東京都内の2つのマンション(新宿区・練馬区)で起きた漏水事故です。
事故内容:外壁や床下スラブの亀裂(共用部分の瑕疵)による雨漏り
被害額:それぞれ約1,400万円と約670万円
争点:管理組合が民法717条1項の「工作物の占有者」として賠償責任を負うか
なぜ東京高裁の判断は覆されたのか?
東京高裁の判断
東京高等裁判所は「管理組合が共用部分を管理しているからといって、民法上の『占有者』とは認められない」として区分所有者の請求を退けました。この判断によると、被害者は管理組合を訴えることができず、区分所有者全員を個別に訴えなければならないという非常に困難な状況に置かれます。
最高裁の画期的な判断(全員一致)
最高裁第一小法廷(岡正晶裁判長)は東京高裁の判断を覆し、「管理組合は共用部分について民法第717条の『占有者』に当たる」との初判断を裁判官5人全員一致で示しました。その根拠は以下の4点です。
・実質的な支配管理:管理組合は規約に基づき共用部分を管理・修繕する権限と義務を持つ
・費用の徴収:区分所有者から管理費を徴収しており、賠償原資を確保している
・区分所有者の合理的意思:個々の所有者ではなく、団体(管理組合)が賠償する方が合理的
・被害者救済:全区分所有者を相手に訴訟を起こす負担を強いることは被害者保護に欠ける
法律的なポイント:民法第717条(工作物責任)とは?
民法第717条は、建物などの工作物に欠陥があって他人に損害を与えた場合、その工作物の「占有者」が賠償責任を負うと規定しています。
ただし、占有者が損害防止に必要な注意をしていた場合は、「所有者」が責任を負います。
今回の判決により、マンション共用部分においては管理組合が「占有者」にあたることが最高裁として初めて明確にされました。
管理組合が今すぐ取り組むべき3つの対策
この判決により、管理組合の責任はより明確かつ重くなりました。以下の対策が急務です。
1. 保険内容の見直し
管理組合が「占有者」として訴えられるリスクに備え、マンション総合保険・施設賠償責任保険の補償内容と限度額を再確認してください。
2. 定期点検と修繕記録の保存
「必要な注意を怠らなかった」ことを証明できれば、占有者としての責任を免れる可能性があります(民法717条の免責規定)。外壁・屋上・配管の定期点検記録は重要な証拠になります。
3. 修繕積立金の適正化
資金不足による修繕遅延が事故を招いた場合、管理組合の過失が厳しく問われます。積立金の額が適正かどうかを改めて検討してください。
判決の意義と区分所有者への影響
・被害者保護が明確に
共用部分の不具合で被害を受けた区分所有者が、管理組合を相手に損害賠償を請求できることが明確になりました。全区分所有者を個別に訴えるという非現実的な負担から解放されます。
・管理組合運営への関心が重要に
管理組合の責任が重くなることで、管理費・修繕積立金から賠償金が支払われる可能性があります。区分所有者一人ひとりが総会に積極的に参加し、管理組合の運営に関与することが、これまで以上に重要です。
・実務上の注意点
管理組合が常に賠償責任を負うわけではなく、適切な点検・修繕を行っていた場合は免責される可能性があります
漏水の原因が専有部分にある場合は、その専有部分の所有者が責任を負います
管理組合が賠償した場合でも、施工不良が原因であれば施工業者等に求償できます
まとめ:判決の5つのポイント
令和8年1月22日の最高裁判決は、マンション管理の実務に大きな影響を与える重要な判決です。
・管理組合は共用部分の「占有者」として民法717条の賠償責任を負う
・被害者は管理組合を相手に損害賠償を請求できる(裁判官5人全員一致)
・管理組合には適切な維持管理がより強く求められる
・保険の加入と修繕積立金の確保が急務
・区分所有者も管理組合運営に積極的に関与すべき
マンション管理トラブルはお気軽にご相談ください
今回の判決により、漏水被害を受けた区分所有者は、より円滑に管理組合へ賠償を求めることが可能になりました。
一方で、管理組合側はより高度なリスク管理を求められます。
当事務所は、千代田区麹町を拠点に、マンション管理組合の顧問業務や区分所有者間のトラブル解決に注力しております。
「共用部分か専有部分か判断がつかない」「管理組合としてどのように対応すべきか」「保険会社との交渉が難航している」
このようなお悩みをお持ちの方は、窪田総合法律事務所までお気軽にご相談ください。
参考情報
裁判所: 最高裁判所第一小法廷
判決日: 令和8年(2026年)1月22日
事件番号: 令和6年(受)第385号ほか
裁判長: 岡正晶
結論: 裁判官5人全員一致
関連法令: 民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第3条
※ 個別具体的な事案については、法律の専門家にご相談されることをお勧めいたします。
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