借用書を作成するべき?お金を貸す前に注意したいポイントを分かりやすく解説!
2025/05/23
ご家族やご友人などから「お金を貸してほしい」と頼まれたことはありますか?
このブログでは、お金を貸す側の立場に立って、注意すべき点を説明します。
◆「貸金」と言えるためには?
仮にあなたが、友人からの「お金を貸してほしい」という頼みに応じ、100万円を友人に振込送金したと仮定します。この100万円は、「貸金」といえるのでしょうか。
「お金を貸してほしい」と頼まれて、100万円を送金したのだから、「返してもらうのは当たり前」という意見もあるでしょう。
しかし、あなたの返答やその後の対応によっては、「贈与」や「出資」と評価される可能性があります。なお、「貸金」と「出資」を混同している相談者の方もいらっしゃいますが、これらは、法律上、明確に区別されています。
「貸金」といえるためには、①お金を渡したことに加えて、②返還の約束が必要となります。「返還の約束」とは、簡単に言えば、「お金を返すことの合意」に相当するものですが、これを特定し、証明することが意外にも難しいのです。
◆どのような場合に「返還の約束」があったと評価されるのか?
「返還の約束」の有無を判断するうえで、当事者がどのようなやり取りを行っていたのかが重要な手掛かりとなります。以下、仮想の事例を踏まえた上で説明します。
【仮想事例】
①2025年5月5日 Yは、Xに対し、「借金を返済するのに、10万円だけ貸してほしい」と連絡した。
②これに対し、Xは、同日、「分かった。10万円を貸すけど、5月30日までに返してほしい」と返答したうえで、10万円をX名義の銀行口座に送金した。
③その後、6月1日になっても、Yが10万円を返済しなかったので、Xが、Yに対し、「期限が過ぎたから、10万円を返してほしい」と連絡した。
④これに対し、Yが「申し訳ない。今日中に10万円を返します」と返答した。
上記の仮想事例におけるXからYに対する10万円の送金が「貸金」に当たることは、想像に難くないでしょう。
【検討】
Xが10万円をYに交付する前、Yは、「10万円を貸してほしい」と発言していますし、貸付けの動機も明らかにしています。また、Xが10万円をYに送金する際、XはYに対し「5月30日までに返してほしい」と連絡しており、返済期限を提案しています。さらに、Xは、返済期限の翌日である6月1日、Yに対して10万円の返済を求めており、Yも10万円を返済しなければならないことを認めています。
このように、①金銭を交付する前のやり取り、②金銭を交付した時のやり取り、③金銭を交付した後のやり取りが、「貸金」を証明するうえで非常に重要です。
相談者の方の中には、「お金を振り込んだのだから、返してもらうのは当たり前だ」というお言葉をいただくことがありますが、なかなかそうとは言い難いのが正直なところです。
◆「返還の約束」を証明するためには?
真実は、仮想事例のような事実が存在したとしても、Yがこれを争うケースが存在します。「借りたものではない。援助してもらった。」、「出資だから、必ずしも返還する必要がない」など、反論の内容は様々です。
このような反論を覆すためには、証拠の存在が不可欠となります。録音、LINE、メール、SMSなど客観的な証拠が特に重要です。もっとも、これらの証拠は、弁護士の立場からすると、内容として不十分である場合が散見されます。
特に多く散見されるのは、貸した時期や金額がLINE等に明示されていないケースです(「お金を貸して下さい」、「分かった。今度会ったときに貸します」など)。
仮想事例のように1回限りの貸付けであれば、それほど大きな問題にはなりませんが、相談者の方の中には、多数回にわたって多額の金員を貸し付けているケースがあります(1万円の貸付が積み重なって総額が100万円に達しているなど)。
このようなケースの場合、例えば、「お金を貸して下さい」、「分かった。今度会ったときに貸します」というLINEが存在したとしても、そのLINEが、複数回の貸付のうち、どの貸付に対応しているのかが分からないため、裁判を提起しても、裁判官の納得を得ることが難しくなります。
仮に、100回貸し付けた場合は、貸金に関する契約(法律の世界では「金銭消費貸借契約」といいます。)が100個存在するため、その一つ一つを証明する必要があるのです(ただし、個別の事案によっては、そのように評価されない場合もございます。)。
◆借用書作成は弁護士にご依頼を
以上のとおり、LINE等によって「返還の約束」を証明することも可能ではありますが、その内容によっては、証明できないケースもありますので、弁護士として、借用書の作成を強く推奨します。特に、振込送金ではなく、現金手渡しの場合は、「返還の約束」だけでなく、「金銭の交付」を証明することも難しくなるため、必ず作成するべきです。
借用書には、「X及びYは、2025年5月5日、XがYに対し10万円を貸し渡した旨を確認する。」、「2025年5月31日までに10万円を返済する」などと記載することで、貸付日、貸付金額、返済期限などを明確に確認することができます。
借用書を作成するうえで注意すべきことは、インターネット上に落ちている借用書のひな形をそのまま利用してはならないことです。「貸付」といっても、その内容は千差万別と言ってよいでしょう。インターネット上でダウンロードした借用書のひな形が、相談者の方の事案にフィットするとは限りません。また、内容として不十分なひな形もよく見かけます。
債権回収のご依頼を受けた際、依頼者から証拠として借用書の提供を受けることがありますが、不十分な内容の借用書を拝見するたびに、「借用書を作成する段階で相談に乗ってあげたかった」と思わされます。
「あの人なら、きっと返済してくれるはず」、「わざわざ弁護士に相談して、費用を払うのは勿体ない」というお気持ちも分かりますが、借用書は、万が一、貸したお金が返ってこなかった場合に備えて作成するものですので、不十分な内容の借用書を作成しても本末転倒です。
借用書作成は、比較的低額な費用で弁護士に依頼することができますので、借用書を作成する場合は、是非、法律事務所に作成を依頼して下さい。貸付の是非を弁護士に相談し、対応を検討されるのもよろしいかと思います。
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